WBS最強

 新聞のテレビ欄を見るたびゲンナリする。予算ないこととヤル気ないことは別物のはずなのに、どこの局も創意ゼロの綜合娯楽番組ばかり3時間も4時間も垂れ流し。ますますテレビ見る気しなくなる。うちはケーブルTVを通してスカパーチャンネルが見られるが、一時期あんなに夢中だった音楽専門チャンネルも最近はご無沙汰。こちらも予算削減、おざなりの極地でひどいものだ。
 こんなご時世。毎日見ているテレビ番組はひとつだけ。テレビ東京のニュース「ワールドビジネスサテライト」である。
 日本経済新聞社協力という、よその局のチャラいニュースショーとは明確に一線を画すこの番組は、何が清々しいといってはっきり視聴者ターゲットを絞っているところ。すなわち「ちゃんと働いている人」「それなりにお金を持っている人」。さらに「自分で事業を動かしている人」だ。
 だからこの番組は「派遣切り」とか「非正規雇用問題」とか「年越し派遣村」とか「ネットカフェ難民」とかを取り上げない。たまにやっても「かわいそう」「セーフティネットが必要ですね」などと同情的には取り上げない。そういう生産性のない層はこの番組に関係ない。「今、いかに不動産を買うべきか」「クルマを買うポイントは」といったネタを堂々とやる。見ている人もまた「マンション買おうかなー、クルマどうしようかなー」と考えている層なのだから。不動産会社や外車の提供CMも堂々と入る。
 100年に一度の大不況だといわれる。起こってしまった大不況に大騒ぎするのではなく、いかに脱却し、あしたの暮らしと日本経済をいかに良くするかを具体的に考える番組である。求職者と求人のミスマッチをいかにすり合わせるか。過度の雇用調整での技術流出と新規技術者育成のスピードについて。安くなって主婦大喜びのスーパーPB商品が経済に与える危険性とは。毎日1時間枠を使えるという強みを生かし、ものすごく細かく分析的にやっている。話の流れ上「非正規雇用者は生産の調節弁」といった論旨もごくあたりまえに出てくる。切ったり切られたりして当然じゃん的な。おなじことをザ・○ールの奥○○子や、ト○タの奥○会長がしかるべき場所で発言すると大炎上するのにな。いかにこの番組が、生産性のない層をハナから門前払いした上でやっているかがわかる。
 面白い。ふつうに面白い。天安門事件ベルリンの壁崩壊の頃の「ニュースステーション」「ニュース23」がいちばん面白かったように、経済危機のいま、この番組が最強に面白い。これだけ「100年に一度」「100年に一度」といわれ続けると、おまえらただ単に100年に一度って言いたいだけちゃうんかと、「お前つゆだくって言いたいだけちゃうんか」という(懐かしの)吉牛コピペが頭をよぎりウンザリするばかりだが、凡百のニュース番組の常套句―「ニッポンを元気にする」のは、石川遼でも侍ジャパンでもなく、「いかにヒト・モノ・カネを回すか」を日々具体的に考えている地味な人々なのである。
 こうして楽しく明日の日本経済を考えるオベンキョができて、しかも開いたばかりのNY市場情報も入ってきて(夜11〜12時という時間枠設定はそのためにある)、CMもなんだか景気が良くて、最高の番組なのだが、ひとつだけいただけないのは「トレたま」こと「トレンドたまご」だな。あれで紹介されるアイデア商品でパッとするやつってめったにないもんな。胡散臭いベンチャー企業で「わが社の新製品は『トレたま』で紹介されました!」ってとくいげに売り込んでくるところがよくあるけど、あれは気をつけたほうがいいよ。マジで。