志村ー!!

 香港から帰って来てる。今回は旅日記は更新しない。忙しすぎるから。いま本の海の中に埋もれてる。ベッド以外足を伸ばせる場所もない。
 フジファブリック志村正彦死んじゃった!うそでしょう?うそでしょう?うそでしょう?信じられない。
 萌えーとかさんざん言っていたんだけどいつの間にか忘れてしまって、新譜も買わなくなって、ワンマンどころかフェスすらいけなくなって、それでも、死ぬって、ないでしょう!うそでしょう?ただ信じられない。
 ここに、旧サイトでいまも公開している2006年1月23日のコンサート観覧記を貼っとく。ご冥福とかそんなおざなりなことぜんぜん言えない。ただ信じられない。

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フジファブリック
「MONONOKE JACARANDA TOUR」
2006/1/23 東京 渋谷AX


 アナログフィッシュがひとめぼれなら、こちらは長の片想いか。フジファブリック、念願のワンマンライブである。我ながらよくチケットとれたもんだ。今やなかなかの入手難なのである。売上的にはそこそこながら―新しいアルバム「FAB FOX」だって結局オリコンベスト10入らなかったもんな―いまや全国のギャルちゃんのハートを焦がしてやまないのである。
 なにゆえか?
 ボーカル志村のトローンと潤んだ目。この人の常にあらぬものを見ているがごとき瞳に、全国のロッキンオンJAPAN愛読ギャルちゃんは悩殺。「ジャニを載せない月刊明星」ことロッキンオンJAPANの、貴重なアイドルなのである。
 って音楽性にも触れなきゃな。懐かしいのに狂ってる。神田川のほとりの四畳半アパートで核融合ロケットを大真面目でつくっているマッドな学生さん、そんな風情を漂わせていた1stアルバムから、より衒いのないロックへシフトした2nd。ともあれ、実演は見ものである。ロッキンジャパンフェスのときよりパワーが下がってたら許さないけど。

 客席はやっぱり女の子ばっかり。と思ったら男もぼちぼちいるなあ。照れるだろうな〜この環境では。
 で、開演。一曲目はロッキンジャパンフェスでも披露していた「地平線を越えて」。新アルバムの中では出色の大曲。が。
 ガツンとくるものがない。
 小さくまとまってる。一丸となって飛んでくるものがない。グルーブに欠ける。つづくアルバム冒頭曲「モノノケハカランダ」も然り。ありゃ、こんなもんかね。と思っていたら、そのあとの「TAIFU」でいきなり良くなった(笑)。テンポの速い古めかしいロックだが、気持ち良くノセてくれる。サビの「だまらっしゃい♪」までサラーッと身体が順(したが)っていく。
 演りなれた曲だからか?フェスやイベントでしばしば演奏する代表曲だ。練れているのか?いや、これらの曲だけじゃなく…
 曲によって出来不出来の差が激しいな。
 演奏が一本の線でまとまって、優しく力強く伝わってくる曲は伝わってくるのよ。しかし一方で、あちゃ〜バラバラだ、この人達向き合って演奏しているのに(そう、前も書いたようにAXは間口が広いのだか、そのわりに中央にやたら集まって演奏している。ベース加藤などほぼ終始ドラムに向かってて客席に尻を向けっぱなしだし。締まったイイ尻してることはよくわかったからさ…)どうしてこんなにあっちこっち向いちゃってるの?という曲も少なからずある。
 新譜の曲は練れてなくてイマイチで、古い曲のほうが出来がいいか、というとそうでもない。新譜の中でも「Birthday」なんか良かったもん。地味な小品だけど。シングル「茜色の夕日」B面の「蜃気楼」も、スケールが大きくて幽玄で良かった。逆に1stアルバム聴いたときにアッと驚いた大作「打ち上げ花火」など、アルバム以上の感興は得ることがなかった。冒頭、金澤ダイスケのエレピの音色がオフコースみたいで妙に懐かしかったけど、それだけ。うー、曲の良し悪しも出来不出来とあんまり関係なさそうだぁ。
 これはどういうことだ?…ライブが進むにつれわかってきたのは、ベースとドラムの出来不出来が、曲の出来不出来に直結しているということ。
 特にベースだわ…。曲の易しい・難しいはあまり関係ない。かなり複雑なベースラインの曲でもかっこよく弾きこなすと思えば、次の曲で「え〜」と思うほどしょぼくなったり。なんだなんだ?弾き手の好き嫌いの問題か?(笑)
 まあ、簡単な曲ばっかりじゃないからなあ。っていうかフジファブの曲って、難しいよなあ…。「唇のソレ」なんて特になあ。細かいフレーズをキーボードとギターでぴたーっと合わせて、しかも速いシャッフルビートに乗せなきゃならないんだからなあ。それで奏でられるのが童謡か「みんなのうた」かというメロディラインだもんなあ。しかも詞は「ほくろフェチ」の歌だし。そりゃメンバーもやさぐれたくもなるわな(笑)でもこの曲、始める前に円陣状態になって「すうーっ」て息合わせてたもんな。すごい緊張感。そうしないと合わないんだな。見てるこっちまでハラハラしちゃったよ。
 その難曲を強いる独裁者鬼軍曹ボーカル志村正彦(笑)。トローンとした瞳は、後方で見てたからわかんないや。意外にもギター弾きまくりだ。ソロパートのある曲もあるのね。下手じゃない。アコギに持ち替えたときちょっとしたカッティング披露したり。で、肝心のボーカルはどうかというと。…あまり触れないでおこう。しょっちゅう声が裏返るとか外すとか、そういうことを挙げつらうのはやめておこう(挙げつらってんじゃん…)ま、そういうもんだってわかってるんで。
 そんな中。舞台下手(しもて)に陣取り、他の出来不出来とはいっさい関わりなく自分の仕事に励むキーボードの金澤ダイスケ。前述エレピにハモンドにピアノ、音色はひたすら古風。おっ、足で弾きそうになったぞ、キーボードの上にのっかって。久しぶりだなあそういうキーボード!三谷泰弘の後継者ついに現る、か。しかし彼の仕事はメンバーの一定のリスペクトを集めているらしい。鬼軍曹志村を含め。近作でずいぶんギターロック寄りになったとはいえ、フジファブの音の要はやっぱり鍵盤のようだ。そういえばヤケに音が大きい。でも期待に応えてキッチリ仕事をこなしてるもんな。
 終盤、何の曲かは忘れたが他のメンバー全員が金澤のほうに向いて演奏するシーンも。まるで教壇の先生と生徒たちの体(てい)。あっはっはっ。金澤クン、テレビでは「生徒」なのにな。CS「スペースシャワーTV」の番組で中学生に扮して出ている。そういやスペシャで「今年の目標」を聞かれて「アゴを整形手術する」と大マジで答えてたな。えっ、いくらシャクレてるからって、その自虐ネタはギャグになってないよ。と思っていたらほんとに顎関節症を患ってて手術が必要なんだって。帰りしな貰ったチラシに書いてあった。気の毒に。早く治してくださいね。お仕事には差し支えないらしいが。

 とかなんとか御託を並べつつ、終盤に入り「桜の季節」「銀河」「陽炎」といったシングル曲攻勢、さらにアンコールで「虹」「花屋の娘」と演るころには、すっかりステージを自分たちのものにして、パワーたっぷりで魅力を十分に発揮していたのである。「桜の季節」は繊細で胸にしみいり、「銀河」はライムカラーの照明に音が溶けてえもいわれぬほど美しい。アンコールではすでに演奏はガッタガタだったが、強固な音のかたまりはもう誰にも崩せない感じだった。
 これくらいの力量で、全編やれたらいいのに。
 終わってからお外で次のライブ=日比谷野音のチケット売り出してた。当然のごとく長蛇の列。でも私は、次は…回避!まあ持ち合わせがなかったというのもあるが。1年ぐらいたって、どんな曲でも聴かせる技量がついたころにまた来るわ♪曲はステキだし。(後略)