ワンコインだよ!六本木昼餉

 ところでお前のランチ予算はいったい幾らなんだよというと、1日600円である。月〜金で1週間3千円。ここから毎日少しずつ倹約して貯め、週1回の諸国漫遊ランチに備えているのだ。そんな私に強い味方があらわれた。六本木で最近、雨後のタケノコのごとく「ワンコインランチ」が増えている。飲み屋さんが昼も店を開けて、500円でランチメニューを出すのだ。外食費用が高くてどうにも難儀だった六本木界隈。ヒルズにマクドナルドすらなく、安メシといえばサイゼリヤと吉牛とラーメンの「幸楽苑」、あとは近隣の現場のあんちゃん専用で女は入れぬ「日高屋」「松屋」ぐらいだった。あまりの選択の狭さに悩み果てていた六本木貧乏人には大いなる福音だ。みんなぁっ六本木にもとうとうデフレがやって来たぞ!って遅いわい!!
 まず外苑東通りを北へ、ワンちゃんネコちゃん売ってる店を横丁に入ったところにある「酒友」。ここはご飯ものと肉うどんのセットで¥500。うどんのおつゆにおでんだしを使っていて美味いよ。ただ難点は盛りが激少ないこと。むかしヒルズの1階路面にあった京風うどん店と同じぐらい少ない。ご飯も茶碗盛り切り1杯だよ。私にはちょうどいいけど、男の人はプラス50円で大盛りにしてもらったほうがいいんじゃない?
 同じく麺&米粒のワンコインランチを出すのが「酒場食堂G」。外苑東通りを逆に南へ、セブンイレブンやガイジン専用100均ショップの近所にある地下の店。沖縄そばとおにぎり1個のセットで¥500。沖縄そばを500円で食べられるとは思わなかったよ。ここはそこそこ量もある。ちょっとショッパいけどね。
 それから六本木交差点まで戻って、新橋方向へほんのちょっと行ったファミマのそばの裏手「Rose Tokyo」。ここはカレーライスと冷たい飲み物のセットで¥500だ。飲み物が付いているのが優秀。客も少ないので意外とくつろげる。カレーはどうやら手作りらしく野菜がけっこう入っていて、味もミッドタウンそばのバルチックカレー程度にはイケてる。
 逆に西麻布方向では海員会館の裏通りの公園から、さらに奥に入ったところにある「駄菓子屋」。天丼¥500。のみならず今週から鮪丼とモツ煮丼も始まったよ!天丼はエビとキスとイカ、それに野菜2種ぐらいのった、きわめて真っ当な天丼だった。+100円でオプション、けんちん汁も付けられる。近所の勤め人のおっさん達に存在が知られだしたらしく混むようになった。席狭いからめっちゃ窮屈だよー。
 さらに西麻布方向へ行った、いまや幽霊ビルに限りなく近いメンテ○ス六本木ビルのそば。地下にある「芦屋文文」は本業は鉄板焼き屋らしいが、日替わりランチ¥500をはじめた。しかもここはさらに安い「納豆ランチ」¥400がある。おそるおそる頼むと、ごはんと味噌汁、ミニカップ納豆と生卵に加え、から揚げ2個とポテトサラダが出てきた。充分である。
 そう、上記5軒の共通点は「そこそこ食える味だ」ということ。かつて六本木には「クエンノ・フォントーニ」と「忍人本舗」というワンコインランチを出す店があって、両店とも食えたもんじゃないひどい内容だった(…らしい。クエンノの方は派遣仲間からの評判でしか知らないが。忍人のほうはよく行ったけどごはんがベチャベチャで、おかずもレトルト既製品ばかりだった!)。いつしか両方ともランチ営業をやめてしまったが、いまやそれではやっていけないということだね。デフレばんざーい、だ。
 というわけで上記5軒はどこもぜひオススメだが、オススメの割にはなんか、場所がイマイチよくわからない書き方をしているような…とお気づきのあなたは鋭い。わざとです。私はイジワルをしている。デートや観光で六本木に来るおのぼりさんにはわからないように書いているのだ。不採算でランチ営業をやめない程度には繁盛して欲しいけど、いまや大東京ビンボー生活マニュアルと化した「Tokyo Walker」などに勘違いで紹介されるのは本意ではない。だって、だって。安いランチは私の日常の生命線なのよっ!遊びで六本木に来る人は遠慮してほしいの!
 六本木にはもっと素敵なレストランがたくさんある。お味やサービスも素敵かどうかは、まあ、いろいろなんだけど、少なくともデートや遊山の気分を盛り上げる素敵な雰囲気のお店には事欠かない。あの…サイゼリヤでも昼時、デート中らしき若い男女や新美術館の袋を提げた老夫婦をよく見かけるんだけど、せっかく六本木に遊びに来てるんだからもっといい店行きなよ、と思う。不景気でお金ないのはわかるけど、ないなら貯めてからおいでよー。ヒルズの物見櫓以外はいまいち観光の見どころにとぼしいなー、と思われがちな六本木だが、実はこれら個性的で素敵な飲食店こそ六本木の重要な観光資源なのである。私も最近気がついた。高いメシ代は拝観料だと思いな!東大寺とか興福寺とかの拝観料はみんな、高くたって払うじゃんよー。