NHKドラマに平伏す

 「龍馬伝」すごくね?見入っちゃってるよー。時代劇も大河もまったくニガテだったこの私が。
 じつはNHK大河ドラマ、「天地人」も割といっしょけんめ見てたのよ。常盤貴子が毎週見られるってのがポイント高くってさ。常盤ちゃん。90年代のトレンディドラマ(死語)の牽引役。好きだったんだな。「ビューティフルライフ」でみずからピリオドを打つように、「いつもテレビで見られる人」でなくなっていったんだけど、「天地人」で戻ってきた。よかった。実際、常盤貴子お船ちゃんはよかったんだよ。ドラマ自体はどんどんヘタレていったけど。
 で、「龍馬伝」。「天地人」と真反対の映像美で見せるのが凄い。
 「天地人」はとにかく端正だった。主人公・直江兼続の性格を映すかのごとく、端正さと計りつくされた美しさを追求していた。たまにものすごい長回しや常識はずれのロングショット使ってみたりもあったけど、それでもコマ割りやアングルなど「こいつらミリ単位まで測って撮ってるだろ」的な、計算されつくした美しさ。秀吉が出るシーンで特に。「現代映像技術の粋をすべてブチ込みましたぞよ」と、たまに息苦しさを感じるまでに端正だった。
 それをすべて覆すかのような「龍馬伝」のフィルム映像。あっ、これフィルムじゃないんだ、「それっぽく見える」高度な映像技術によるビデオ撮影なんだと。しかしこの粒子の粗さ、ハンディ・カメラを多用して終始落ち着かない撮りっぷり。幕末という、何かが起きる、そわそわとおちつかない季節を体現するようなカメラの揺れっぷり。それでも登場人物のアップの顔にぐいぐいと迫っていく。粗い!でもそこが肉々しくていい。ドキュメンタリー映画風だね。龍馬という男が「そこにいる」ような生々しさが、伝わるよ、伝わる。
 またそれに頑張って対応している福山クンや、岩崎弥太郎香川照之もいいんだわ。福山雅治は基本的に「古めかしい人」だったんだね、改めて気づく。ドラマが当たり前にフィルムで撮られていた70年代のにおいをぷんぷんさせてるこの演技。すごく、映像と呼応して、古きよき俳優をまっとうしようとガンバテルネ!また岩崎弥太郎もいいね。こんな人が始祖なら三菱商事も許してやろうかという気になる(許してなかったのかよ!)。他のキャストもいいよねー。ピエール瀧の顔のデカさに至るまで、いちいちいいよー。
 っつーかNHKのドラマって最近いいんだわ。土曜にやってる「君たちに明日はない」もすげーよ。坂口憲二がこんなにマトモな俳優だとは知りませんでした。婆フェチ・フケ専という、民放じゃまずありえん人物設定をとっても素直に、しかし素敵に演じている。それを包み込んだり翻弄されたりする「婆」、麻生祐未田中美佐子もなんともいえずイイ。泣かすよ。
 NHKは去年の「キャットストリート」や「上海タイフーン」も良かったんだわ。そりゃ「ウェルかめ」みたいなどうしようもなくグダグダなのも作るけど、いいときは本当に良いものを作る。まあ、税金と視聴料つぎ込まれているんだからいい物作ってもらわなきゃ困るんだけど(苦笑)、それにしても実に良心的だと思うよ。このままがんばれNHK。(でもやっぱ龍馬伝は後半グダるのかな?)