君が、嘘を、ツイッター

 タイトルはオフコース往年の名曲ですよん。さてTwitter。私もお店の販促用にIDをつくって、そのままなんとなくやっている。
 mixiの出始めのころと同じで「こんなのやるもんかっ」と思っていたくせにな。あの勝間和代の偉そうな鼻の穴が脳裏に浮かんでよー。ただ「一日何度でも、2〜3行でさっと更新できるのは便利かも。ワンフェスに店を出すときに、現場から中継がわりに更新したら良い宣伝ツールになるかも。」そう思って「おでかけ出店時の中継専用ですヨ」と断りを入れて、始めた。
 …あれから1ヶ月近く。いまだ頻々とつぶやいている。おいおい。なんでだ。つぶやく内容は実にしょーもない。ダジャレ、ギャグ、アナグラムといった、内容のあるものならまだいい。ほんっとに「本を買った」「ナニを読んでいる」「雪が降っている」といった、ただの1行日記だもんな。アドレスもワンフェスのとき以外は店サイトで公開してないから見る人もほとんどいない。なのにつぶやくんだわ。家で、商品のあらすじ書きをしてて煮詰まった時(っていうかたいていいつも煮詰まってウンウンうなされてるんだけど)、ケータイでつぶやき一発。これが気分転換になるんだわ。こうして人はネットの悪魔にはまっていくんだなあ。いちおうお店の名でアカウントを取っている以上、お店に関係ないことはなるべくつぶやかないようにしてるけど、こんな意味のない言説をネットの野に残すなんて、堕落だ堕落。
 で、自分でつぶやくだけじゃなく、「フォロー」や「返信」の機能をたどって他人や有名人のツイート見に行ったりもするんだけどよ。やっぱりいるなあ…つぶやいてる中途半端な有名人に対し、すっかり友だち気分で逐一なれなれしい返信を送るファンが。でまた有名人側も律儀に返事しちゃったりするんだなーこれが。まだTwitterはユーザーの絶対数が少なくて、「情報生活がススンでる人どうしの秘密クラブ」的なにおいがする。いかな有名人であってもフォロワーの数は、まあよっぽどのアルファブロガー(笑)か政治家でもないかぎり、個人で管理可能な範囲におさまっているけれど、それをいいことにプライベートな友人知人とのやりとりも単なるファンへの対応もごっちゃにしている「中途半端な有名人」の多いこと多いこと。あーらあら。いーのかなー。
 けっこうな有名人でも、フォローしてきた人を逐一フォローし返す主義の人がいるようだが、これ、相互にフォローしあうと「おたがいに友だちとして認め合った」みたいな気分になっちゃうんだよね、mixiのマイミクと同じで。実際友だち同士でそういうふうに使っている人も多いし。で、有名人側もヒマで、プライベートな友人もファンも分け隔てなく頻繁にレスを返しちゃってたりすると……「会話が続いてる。話が盛り上がってる!この人と私は、すっかり仲良しだ!」と、勘違いしたファンが現われるのは時間の問題。そしてある日、「打合せ終わりでラーメン食ってるなう」なんてつぶやいたとき…すっかりリアル友だち気分のファンがラーメン屋に入ってきて「なんのラーメン食べてるんですか?味噌?塩?おすすめ教えて下さいよ」と、隣の席からなれなれしく話しかけてきたりして。そこから後は…知ーらないっと。
 まあ、私は馴れ合いが大っ嫌いでへそ曲がりなので(だから友だちも少ない)こんなことを考えるのだろうが、しかしよくよく考えてみるとだな。ラーメン食ってるところにファンがなれなれしく押しかけてきたところで、特になにか実害があるだろうか?
 そりゃストーカー化して犯罪行為とかにまでエスカレートしたらヤバいけどさ、このあいだの耳かきエステ嬢殺人事件みたいに。でも大半は…たいしたことない気がする。昔だって地方のラジオ局のパーソナリティで、局に集まったリスナーに実に親身に接してくれる人がいた。その人がファンにまとわりつかれて悩まされていたかというと特にそんなこともなく、ふつうに人気を博していた。いまはTwitterによって一億総「田舎の人気DJ」状態なのだと思えば、そうおかしなことでもないわな。
 そうなると、だ。俗にアーティストやタレントとよばれる人々には、事務所とレコード会社がついているが、もう、それらの仕事は無いんじゃないの?
 古来、事務所やレコード会社の仕事といえば、アーティストの「仕事を取ってくる」「スケジュール管理をする」「吹き込んだ歌を全国流通にのせて届ける」「メディアを使って宣伝をする」があるが、ほかに「ファン対策」という重要なのがありましてな。無軌道にファンが接触してきて混乱に陥らないように、アーティストを守るお仕事。出待ちで道路をふさぐファンの群れを力ずくで散らしたり、集まったバレンタインチョコレートからアブナそうなのを取り除いたりするフィジカルなお仕事から(私もやった)、できるだけ炎上しにくいように言葉を選んで公式コメントを作成発表するロジカルなお仕事までいろいろだ。でもさ、すでに「ブログ炎上」とかで問題視されてるけど、いくら守ってもTwitterやブログでだだ漏れになっては事務所も管理しきれないじゃん。しかし昔みたいにアーティストとファン、「発信する側」と「される側」に大きな隔たりがあった時代ならいざ知らず、今は別に、ファンとラーメン屋で会ったところで困るようなアーティストもそういないじゃん。こうして守る役割なんてどうでもいいとバレてしまったら…事務所もレコード会社もいらないよね。
 他の機能だってそうだ。MySpaceやニコ動、Youtubeがあれば別に歌番組にもラジオ番組にも出る必要が無い。プロモーションはTwitterだのmixiだのでファンの一本釣りから始めればいい。曲が出来たら配信で全国に届ければいい。印税管理もスケジュール管理もアーティスト自身でやればいい。あれ?レコードメーカーも音楽事務所も、いらないじゃん。
 ということにアーティストの皆さん既に気づき始めているようで、結果として巨体企業のさばる音楽業界、レコード業界は只今大不況らしい。が…MySpaceYouTubeTwitterとiTSがあれば、もう事務所もレコード会社もいらない。って、それってうちの店とやってることが変わらないような気がするんだけど…気のせい?もしかして私は最先端さきどりの、ナウい人だったのか(笑)
 見たことがある人もない人もいるだろうがうちの店のサイトはしょぼい。やっすーいHP作成ソフトを使って、全部自分でデザインしているからだ。特にこのしょぼさを解消する必要性も見出せないので数年来このままだ。MySpaceやニコ動を使って人気を博しているインディーズや、ボカロ使ってバカ売れしてる曲やなんかをたまに試聴するけど…やっぱりインディーズ、趣味音楽の域を出ない品質なんだわー。センスや目の付け所は良くても。
 「その荒削りさが良い」っていうけど、荒削りなのしかなかったら、ちゃんと磨いた芸能の出番はないじゃんかよ。世の中そんなのばっかりになったら、総勢60人のフルオーケストラ率いてライヴをやった林檎ちゃんや、毎週でっかいセットを組んで派手に壊してオチを作った「8時だヨ!全員集合」のような、スケールのでかい芸能は生きていけないじゃんかー。そんなんでいいのかよー。と、そんなことを考えながら今日もTwitterでダジャレをつぶやくのだった。きょう人類が初めてー、木星に着いたよー、ツイッター!(←私の記念すべき初つぶやき)