世界一周!六本木昼餉(16) イラン

六本木で、ランチだけで世界一周は可能か?



 先週にひきつづき「アメリカ大きらい国家」第2弾、イラン。略史を書こうとすると革命とか戦争とか戦争とか戦争とか大変なことになってしまうので省略。専門料理店があるんですよ六本木に。名前は「アラジン」とメルヘンチック。店内にも千夜一夜物語の情景を描いた絵がかかるなど武闘派国家のなまぐささは感じられない。しかしここ、実はこの諸国漫遊「三大鬼門」最後のひとつであった。なにが鬼門かというと…「量が多い!」。道中唯一のバイキング形式なのである。わたし胃袋小さいんですよ。基本少食なんです。(でも食べたものは全部贅肉になるので太ってますが何か?)でも食べ放題だとつい調子にのって食べすぎちゃう。そしてあとで地獄を見るのである。よほどおなか空かせて行かないとまずいんだ。というわけで胃袋準備万端で、ヒルズ脇道・テレ朝通り沿いのビル2階にある「アラジン」に向かったのだった。
 入口は重い木の扉がぴったりと閉ざされていて、それだけでびびる。入るとおヒゲで容貌魁偉なイラン人ウエイターさんがワラワラといてまたびびりまくり。席に着いただけでなんだろう、この緊張感は。イランは厳格なイスラム教の国…だったよね?女性ひとりで入っていいのかしら、みたいな。(いいらしい。でもあんまり肩身広くないっぽ)
 バイキングのメニューはわりと豊富。壁ぞいにバットや炊飯器がズラリ並んでいる。しかし…見たこともないような食い物ばっかりだ!なんだこれは!?とりあえず大きな皿に片っぱしから少しずつよそって席に戻る。
 まずはシチューから。レンズ豆とお肉の「ゲイメ・シチュー」。見た目と香りはポークビーンズそのもの。ところが食べてみると…甘みがない。塩からさと、そして酸味が。お肉は羊なんだね、でも牛と見まごうばかりにしっかり煮込まれて味がついている。酸味のもとはトマト。舌が慣れるにつれ、トマトの風味を最大限生かした味がわかってくる。サラダは普通の生野菜(少しブリーチくさい。日本では野菜を洗剤で洗っちゃだめだヨ!)。ラザニアもわりとフツー。黄色っぽいチキンの骨付きローストはかなりハーブがきいている。細長い黄白色のブツとともに和えてあったので、フライドポテトかな?と口に入れたら酢漬けの野菜だった!
 サラダのそばにペースト状のおかずが2種。薄黄色と薄桃色の。薄黄色の方は単なるポテトサラダだったが、薄桃色のこれ、うまいね!レバーペーストかチキンペーストみたいだ、けどぜんぜん味違う。ウエイターのお兄さんに名前と材料きいたけど忘れちゃった。ゴマとかもまぜて練り練りしてるんだって。そのとなりに、どうみても「さつまあげ」っぽいブツが。食べてみたらポテト味。外語祭料理店の、チェコ科が出してた揚げスナックっぽい。チキンと一緒に練って揚げたものだって。
 そしてサフランライス。炊飯器を開けるなり、もっふぁーーーーーんと襲い来るハーブの香り!ブチ込み過ぎだ!サクロンか新三共胃腸薬の溶液で炊いてるんじゃないかってぐらいの。しかもかなり独特な、ワイルドな風味のハーブ。米自体にもワイルドライスが混じってるっぽい。でもさっぱりしててうまいや!白飯もあった。これがサラッサラでパラッパラの長粒米長粒米かあ…93年の大凶作の時に食べたなあ。お久しぶりです。そして今年秋ごろからもまたお世話になります(…かもね。6月にしてこの涼しさでは!)。それにしても長い米粒だなあ!米というよりブツ切りのヒヤムギみたいだ。こんなのはじめて見た。これにカレーをかけて食べる。赤っぽい、とろみの少ないカレーで、具はブロッコリーとカリフラワー。イランにカレーがあるの?って話だが、これがインドともタイともマレーシアともスリランカとも違う、食べたことのない味。あまり辛くないけど香料はブチ込みまくってあるようだ。これらゴハンの炊飯器の横にスープがある。ドドメ色になるまで煮くたした葉っぱがたっぷり入っている。あ、モロヘイヤだ。こちらにも酸味がきいている。まったく赤くないのでこれはレモンなど柑橘類で酸っぱくしているのだろう。
 驚いたことにデザートまであった。バットいっぱいにつくったプリン、これはありきたりだが、もうひとつイチヂクの甘煮があった!干しイチヂクを戻してシロップで煮るらしい。糖水に通ずる素朴な甘さで、これはうまいな!コーヒーにも合うよ。おかわりしてしまった。でも食べ過ぎ注意ネ、イチヂクはお通じのくすりネ。以上、制限時間1時間のランチバイキングで¥1,200。
 食後会社に戻ってきて驚いた。あまりにふんだんに用いられたハーブの「余韻」が、こんなふうに身体に残るとは…。これは一応グルメブログなので詳述は控えますが、はじめて香港で亀ゼリーや廿四味をお召し上がりになられた方は、爾後「こ、こんなふうに『余韻』が身体に残るのかーーーー!」と驚かれるのではないかと思います。同じ現象が起こったねえ。これにはびっくりだ。
 しかしハーブと酸味を駆使した、いままでに体験したことのないふしぎな味のオンパレードで、やっぱり世界は広いんだなー、まだ食べたことのない食べものがたくさんあるんだなあーと思った。これぞ外国料理店の醍醐味。イランなんて自分ではまず行けそうにないし(そりゃまあ革命戦争戦争戦争ときどき平和、とかではねぇー)、異文化体験を味わうにはぴったりのお店かもしれません。店内ほとんど日本人いないし!英語さえ聞こえないし! 


本日の評価 ☆☆☆☆ 

アラジン

食べログ アラジン