GReeeeN解散報道マッチポンプ説を論証する

 けさの日刊スポーツに「GReeeeN解散」という大きな記事が出た。これに対し、午前中にバンドメンバーのブログで「解散しません。報道に怒りを感じている」という趣旨のエントリがあがった。続いて所属事務所とレコード会社も、解散を否定する公式コメントを出した。
 これは11/25発売のベスト盤を宣伝するための「マッチポンプ」なのではないか、という説が某巨大掲示板を中心にささやかれている。日刊スポーツにわざと「解散」という記事を書かせた。バンドを注目させるためであり、すぐに否定するところまで全て茶番である、と。
 私はこの説を断固支持する。しかし「茶番だ!マッチポンプだ!」とタダ叫ぶだけではこちらが「風説の流布」で日刊スポーツやユニバーサルミュージックに譴責されてしまうので、一連の騒ぎがマッチポンプであることを具体的に論証していこう。
 そもそもバンドやグループはなぜ「解散」するのか。それは集団での活動続行が困難になったからであり、なぜ集団活動が困難かといえば(A)メンバーが「もう、おまえらとは一緒にやっとれんわ!」と言い出した(B)いや別にメンバーのケンカはないが、活動を続けられない物理的理由ができた、以上のいずれかである。ここで、GReeeeNに関しては(A)の理由に無理があることがわかる。なぜなら彼らは世間に顔を出さない覆面バンドで、したがって観客を前にしたコンサート活動も媒体出演も、本人稼動のプロモート活動すら行なっていないからだ。バンド単位での拘束・活動時間が極めて少ないのである。すなわち「解散」するほどの「集団行動」をしていないのだ。唯一のバンド活動がレコーディング(それも、演奏を合わせる「セッション」などが伴わないスタジオワークだ。プロフィールによればGReeeeNは楽器を演奏するバンドではなく、皆で合唱をするボーカル集団なのだそうだ。確かにバックトラックはほとんどサンプリングと打ち込みだ・・・)である。それなら「もう皆で一緒にやるのイヤになっちゃった」として、だったら「明日からスタジオに行かない」とすれば済む話である。それは「活動中止」「活動終了」と言うのであって、「解散」はふさわしくない表現ではないか?まして彼らは歯学生or歯医者との兼業で、2つの顔のうちの音楽をやめる、それだけである。ますますもって「活動中止」や「終了」のほうがふさわしい。にもかかわらず「解散」と報道に出たのは、よりセンセーショナルな表現を「狙った」のではないのか?
 では(B)の理由はどうだろう。物理的な理由=例えばメンバーの身体的事情(病気になったetc)、家の事情(実家の工場を継がなければならなくなったetc)などがなければ、要するに事務所やレコードメーカーの事情が、バンドの活動をこれ以上許容できなくなった、ということだ。これはありえるだろうか?
 ここでポイントとなるのは「11/25発売のベスト盤」である。このリリースは1ヶ月ほど前から告知されていた。本日の解散報道よりずっと前である。ということはベスト盤が企画された時点では解散の話はなかったと考えるのが妥当である。さて、一般的にベスト盤はどのような場合にリリースされるだろうか?(1)アーティストの移籍・引退・解散・逝去などの際に「メモリアル」「集大成」という名で最後のひと稼ぎ。(2)アーティストサイド・レコードメーカーサイドにちょっとおカネが必要になったときの、手っ取り早い回収手段。最近は不況を反映して(2)が極めて多いが、GReeeeNもまあ、(1)の意図ではないと推測される。で、CDは発売の1ヵ月半〜2ヶ月ぐらい前から、発売日にレコード店・各種販売チャネルに置いてもらう数を決める「イニシャル受注」が行なわれ、発売3週間前〜1ヶ月前に締め切られる。つまりちょうど今ごろ、初回出荷枚数が確定し、ということはレコードメーカーがGReeeeNのベスト盤で得られる売上金額や、アーティストが印税として受け取れる金額も確定するわけだ。ベスト盤は通常のオリジナルアルバムの何倍かの売上があるものなので、今ごろは関係者一同、そこそこまとまった「お年玉」が入ってくる、その金額が確定して商売前向き気分になっているはずだ。商人は大きなおカネが入ってくるときにネガティヴなことは通常考えない。このタイミングでバンド解散が頭に浮かぶ関係者がいるとは、考えにくいのである。
 ではなぜこのタイミングで「解散」報道が出たのか?
 CDのイニシャル受注を締め切ったあと、たまに「二次受注」ってのをやる。お店での予約数が初回出荷枚数を上回っちゃったとか、「グラミー賞受賞!」「ヴァン・クライバーン国際コンクール受賞!」など予想売上枚数を大幅に上回りそうな突発事象が起こったとか、あと「こんな売上では今季の経営厳しい!もっと売ってこーい!」とハッパかけられたとか、そういうときに、やる。GReeeeNの関係者の皆様は締めたイニシャルの数字を見て、「お年玉・・・もうちょっと、あってもいいんじゃないの?ないと、赤字なんじゃないの?」的なことを考えたのではないか。で、「そうだ!とにもかくにも目立たせて、お客さんにもお店の人にもGReeeeNを思い出してもらって、そいでもって二次受注だ!」と…
 そんなのやっちゃダメだよ!絶対ゆるせない!
 あたしゃ前々から「いーいタイミングで結婚するミュージシャン」というのに疑念と怒りを感じていた。もうとっくに忘れられているだろうけど去年秋に長○川京子とポ○ノグラフィティのメンバーが結婚したよね。発表のとき、ポ○ノグラフィティはすぐあとにベスト盤のリリースが、長○川京子は主演映画の封切とドラマの放送開始が控えていた。自分の結婚をたねにタダでパブリをとろうとしたんじゃないだろうか。夫婦揃って。もしそうだとしたら、なんというせこい話だ。他にもいるぞ。ずうっと奥さん子供いるの隠してたのに、なぜか新譜リリースの前日発売の女性週刊誌にタイミングよく「スッパ抜かれちゃった」某バンドメンバーとか。自分の私生活をそんなことに使うのか…そこに愛はあるのか?と、かねてからムカムカムカムカきていた。
 でも…ここまで臆面もないの見せられるとさあ。結婚ネタやおめでたネタなんて可愛いものに見えちゃうよね。解散までネタに使うのか。そこまで業界の不況ってヤバいわけ?
 これ、音楽業界だから誰も傷ついたり実害こうむったりしないのかもしれないけど、同じことを例えば果汁業界がやったら…社会的に絶対許されないから。消費者庁がからんでくる話だよ。例えば、ある果汁ドリンクが「異物混入!生産中止、回収!」みたいな記事が出て、「そのような事実は一切ございません」って、あとで製造元が表明したとしてもだよ。「すわ!たいへんだ!」って、そのドリンクの卸売業者、一括仕入しているスーパーやコンビニの本部、末端の支店や地域営業本部、原料を納品している業者、そのまた原料をつくっている国内外の農業生産者、さらにはパッケージを納品している業者、おもてのラベルを印刷している業者、納品時の段ボール箱を納めている業者まで、みんなが大パニックに陥るんだ。「信用失った」って、発注止められてつぶれちゃう業者だって出てくるかもしれないんだよ。で、「すいません。目立たせるためのガセでした」ですむと思う?
 …なんでもアリなわけ?いまの音楽業界は。すくなくとも、まともにいい曲つくってまともに売り出すのがバカバカしくなっちゃうような、そんな真似はやめようよ。ね。