ユニクロは買わないのだ

 今年に入ってお店の売上がみょーに良い。おかげでてんてこ舞いの忙しさなのだが、久々に小金が入ってくる気分は、悪くない。
 それで先日お洋服をバカ買いしてきた。ずっとロクに買い物にも行けてなくて、靴もカバンもボロボロ、穴の開いたセーターや毛玉だらけの靴下をそのまま着用していた。これはさすがにひどい、と。おりしもバーゲン期間。新宿南口へ行って、たった1日でこれだけ買ってきた。
 まず高島屋INEDで通勤用のズボン2本。ルミネ2に移動してFREE'S SHOPで真っ赤なバルーンワンピ、ストライプのカーデ、黄色いフワフワ半袖ブラウス、ベルベットレースの入ったピンクのアンサンブルニット。ユナイテッドアローズで編み込みセーター、同じルミネ1の4階のお店でキラキララメ入りストールカーデ。フラッグスのGAPでタートルネックシャツをストライプと紫の2枚、深紅のストールカーデも。ついでに無印良品でレギンス2本、靴下屋で靴下3本。そのうえ帰宅してWEB通販のルミネでもトプカピのバッグにRope picnicのプリント入りロンT。すっげー。何着買ったんだろう?
 しかし安かったんだよ。GAPなんかバーゲン価格をさらにレジで20%引にするっていうし。デフレばんざーいだ。で、次の日から会社行くのにとっかえひっかえ着ているが、やっぱりカワイイお洋服、いいお洋服は気分がアガるねえ。フリーズショップのカーデはドレープの形が複雑で巧妙なデブ隠しができるくせに肩だけ鋭角的で、実に良く出来ているし、よそ行き用ワンピは試着もしないで買っちゃったけどマジ超カワ。ユナイテッドアローズのセーターもなにげに形がいいし、ハデハデ色のGAPのカーデも、香港のESPRITで「地味だなぁー」と思いながら買ったグレーの刺しゅう入りシャツと合わせたらビシ決まりだ。他に大して娯楽がないぶん、カワイイお洋服を着るだけでこんなにアガるとは思わなかったねえ。
 お洋服にはまったく興味がなくて、裸じゃなければじゅうぶん、寒くなければじゅうぶん、とその程度にしか考えていなかった。が、実は私、年頭にたてた2010新年の誓いがあって、「なるべくユニクロでは服を買わない」なのである。
 おおかたの日本人のご多分にもれずユニクロばーっかり着ていた。まわりの友達も、昼の会社のおじさんも女の子もみんなそう。
  ユニクロはとても便利だ。ちょっとした街なら必ずお店があるし、それどころか自転車ですぐの隣町にまである。いや家から出なくても通販があって、ズボンの裾丈さえこまかく指定して注文できる。ANAのサイトを通せばマイレージまでたまる。品物は安くて、丈夫で長持ちするし、見た目もそこそこ悪くない。なにより市民権を得ている。とりあえず日常に必要なお洋服が、なんでも簡単に手に入る。
 が、しかし!安いから、便利だから、考えなくていいから、恥ずかしくないから、という適当な理由でユニクロで済ますのは…うまくいえないけどなんか、何かが間違っている気がする。選ぶことを放棄するのはよくないと、私の中の香港漫画店店主が叫ぶのさ。せっかく多様な選択肢があるのに、貧乏を言い訳に、選ぶことをサボって、画一的な方向へ流れていくのは…よくわからないけどダメだと、マニアックな店の店主が叫ぶのさ。こうしてせっかく先人が積み上げてきた、豊かな日本の多様な文化を、日本人は「やる気のなさ」ひとつで、まずしく画一的なものに戻そうというのかと。それから、ひとつの強い企業の「ひとり勝ち」に力を貸すのかと。それは回り回って自分の首を締めることになりはしないかい?
 それにさあ…気付いたんだよ。やっぱ、ユニクロの服では気分がアガらない。つまんないんだよね。せっかくだから楽しく行きたいじゃん?アゲていきたいのさ。
 ちょっと小金が入ったとて貧乏は基本的に変わらないから、これからも私は安い服を買うだろう。GAPもたいがい安いが、ヒルズにも入ってるZARAもかなり安い。いまや下北沢には千円均一のお洋服屋さんなんかがボコボコあるし、近所には激安衣料の店「のとや」もある。西友でも買うかもしれないし、あるいは香港でGIORDANOやESPRITも買うだろう。でも、ユニクロでは買わないのさ。似たようなもんかもしれないけど、でもユニクロでは買わないのだ。
 そういえば昨夜のフジテレビ「ジャーナる!」を見たが、若者に対するアンケートで「今いちばん欲しいものは?」と尋ねたところ、うそかまことか1位が「ユニクロの洋服」だったという。20ウン%の支持率で。そんなもん欲しがってないで買えよ…たかだか千円か2千円じゃないか。まあこんな貧乏から脱却する気概さえないショボクレた若者のことなどほっといて、我々おとなだけで楽しくやりゃいいやと思うのだが、それにしても漫画「サザエさん」のネタを思い出してしまった。マスオさん、もうすぐボーナスが出るので気が大きくなっている。「なんでも欲しいものを買ってやるぞ!言ってごらん」。すると
カツオ「うーん…ボク消しゴム」
ワカメ「あたし、ふうせんガム」
マスオ「見くびるなッ!もっと出るぞ!」