なんで渋谷のHMVだけ?

 渋谷のHMVがきのう閉店したってなあ。あたしゃHMV、わけても渋谷店は昔からいけ好かなかったが、閉店報道が新聞にもWEBニュースにもテレビにも派手に出るにつけ、むかむかと腹が立ってしかたがない。


なんで渋谷のHMVだけが?


 かつて「渋谷系」とよばれた数多くのミュージシャンやDJらを集結させ何日もかけて派手な「さよならイベント」をやり、惜しまれながらシャッターを閉める店がある一方で、経営者が夜逃げし、飛び降り、首を吊り、ある日突然張り紙一枚で店がなくなり、二度とシャッターの開かぬ悲惨な最期を遂げたレコード店が全国に何軒あると思ってるんだ!!
 豊橋の「ヤ●ト楽器」はマジで経営者が突然失踪したらしい。名古屋金山に本店のあった「G×××VE!」はちゃんと倒産してツタヤに吸収されるだけ後始末をしたからマシかなあ。いいお店だったのになあ、北陸にも何軒もかっこいい支店があって、店長が万引き犯を追っかけてボコって捕まえてて新譜受注商談の席に遅れるという、まさにロックを体現するお店もあったのになあ。北陸といえば「Y蓄」もつぶれたってなあ。クラシック専門店まで擁する老舗中の老舗だったのになあ、と感慨に浸っていたら「いや最期はかなりアレだったよ。従業員には直前まで知らされなかったらしいし」と昔の同業仲間が教えてくれた。いやしかしそれでも大阪の「ワ●ツ堂」よりはましでしょう。たまたま私が大阪へ観光旅行に行って、千日前を歩いていたら張り紙一枚でシャッターの閉まったお店があってなあ。ちょうど前日に破産しました、って書いてあったの。大阪は大月楽器がひと足先に悲惨な倒産劇を演じ、同時期に「ミドー」などパタパタッと逝く店があったんだけど、●ルツもかよ!と悲しくなった。経営陣のひとりが破産数日前に自殺していたというニュースが悲しみに輪をかけた。
 ざっと、私がレコードメーカー時代に営業でまわっていた店を挙げただけでこうなんだからなあ。いまや残っているお店のほうが少ないよ。例外なく末路は悲惨だ。渋谷のHMVみたいに「お葬式」をやってもらえるお店なんて稀有。人間でいえば「行旅死亡人」「無縁仏」ばっかりだ、といえば悲惨さがわかってもらえるかな。
 もちろんそういった店のなかには「わしは屍肉をあさって生き抜いたんねや!」と自分でお店を作って復活した人もいるし、レコードメーカーの人間もミュージシャンもちゃんとみんな生きているわけだし、だめになっちゃったお店の人たちも必ずどこかで元気に暮らしている、と信じたい。だってほら、メーカーの営業で最高にダメ子ちゃんだった私だって、こうやって母と二人、飢え死にしない程度にやってるんだもん。心配はいらないのだ、が…。HMV渋谷みたいに「さようなら!いい思い出を、ありがとう!」などとニコニコ笑ってお別れするのは、どうしても違和感がある。
 だいたいHMV渋谷にしてもさあ。末期はかなりアレな感じだったぞ。あたしゃ8月はDeath忙しいからきっとこれで見納めだなあ、と思いながら先月中旬の夜に行ってみたのさ。入ってすぐ目に飛び込むディスプレイは「恵比寿マスカッツ」だった。…いや、恵比寿マスカッツを貶す意図は毛頭ない。でも…でも…お色気グループじゃないかっ!!それを「元祖シブヤ系の聖地」とか、閉店の日になって持ち上げたって「なに言ってんだ今さら」と冷めた感想しか浮かばない。そもそもだな。「シブヤ系」は渋谷だけで売れたんじゃないぞ!小沢健二コーネリアスラブ・タンバリンズオリジナルラヴカジヒデキサニーデイ・サービスフィッシュマンズも、日本全国、黄色くなった蛍光灯が照らす田舎の駅前のお店で、田舎もんがこぞって買ったからこそあんなに売れたんじゃないかぁっ。そういう過程を無視すんじゃないよ!
 いや同じHMVだって、閉まりぎわの待遇の違いに疑問が残るよ。ずっと行きつけていた銀座と数寄屋橋の支店も閉店した。末期は本当にひどいものだった。まず客がいなくてさあ。がらーーーーーん。それから商品がなくってさ。売れてもぜんぜん補充しなくて、あそこは什器が黒いから商品がないと暗さが余計目立っちゃって、闇夜の砂漠状態だったもんな。窮余の策でジャニーズコーナーつくったり演歌コーナーつくったりしてもかえってちぐはぐでさ。サブちゃんの金ピカ銅像置いたり、そういうのはすぐ近所の山野楽器に任せておけばいいじゃーん!なんでHMVが?ばかみたい、と思ったもん。それでも閉店間際なら「閉店セール」で投売りしてるかな、と銀座店に立ち寄ってみたが、投げ売ろうにも投げ売る物がもともとないのだった。完全に無駄足。
 どうしてこうなっちゃったのかね?
 CDが売れなくなっちゃったからだ。何故売れないかというと、配信や違法ダウンロードに食われたからだ。と、訳知り顔の連中は言うけれど違うって!!買いたくなる曲も、買う気をそそるお店も減っちゃったからだよ!
 あのさあ。90年代、メガヒットの時代。大量消費のくだらない曲ばっかりだったと言う人がいるけど違うぞ。このあいだ洗濯しながらふと広瀬香美の「ゲレンデがとけるほど恋したい。」を口ずさんで(真夏に!)、改めて「よく出来た曲だなあ」と感心したもん。また通勤中にシャ乱Qの「ズルい女」をふと思い出して、「この曲すごいなあ。奇跡みたいに全てがピタリとはまってるなあ」と思ったり。どちらも別に好きでもなんでもなかったけど、メロディ、詞の乗せ方、言葉の選び方、アレンジ、そして自作自演ながら圧倒的な歌唱力、どれも凄すぎる。天才ソングメーカーと精鋭スタッフが総力を結集してつくった、という感じがビンビンする。と売れて当然だ。こんな曲を湯水のように消費していた時代は幸せだったとしかいいようがない。いまのポップソングは貧しすぎる。いまさらアタクシに「会いたい」のひとつ覚え、どれ聞いてもおんなじメロディ、ラップと称する念仏をムニャムニャ唱えて途中を端折る、ああいった曲を聴けとでも?
 それと「買う気をそそるお店」ってどんなんだって話だが、まずは古典名作というものをちゃんと常備しろよ!話はそれからだ。メーカー営業時代に会社の先輩が「なんだこの店は!イーグルスの『ならず者』さえ在庫してないじゃないか。店に言ってやりたいよ、『おまえの店こそ、ならず者だ!』って。」と文句言ってたりしたけど、ダジャレの寒さはともかく、いまこんな会話を交わすレコード店関係者って、いるのかな?と思ったらツタヤがこんどCD売場スペース4割縮小、旧譜在庫ばっさりカットだってさ。逆のことやってどうするの!
 それでも銀座の山野楽器とか下北沢のモナレコードみたいに、いまも「にぎやかに盛り上げてCDを売ろう!」というお店は少数派ながら存在する。マスコミもHMVの葬式ばっかり取り上げてないで、こういうヤル気満々なところを紹介しろよ!銀座の山野は楽しいぞ。スターダスト・レビューの新譜発売日には、大型ディスプレイ什器に店内モニターでのライヴ映像に過去30数枚の旧譜アルバム&映像商品オール面出し平積みで、四方八方からこれでもかこれでもかと、根本要の四角い顔がサラウンドで迫ってくるんだぞ!アルフィーの新譜発売日にも似たような状態になるって聞いた。山野はアルフィーファンの聖地だとか。それでいいじゃん!私たちみたいな(年齢の)大きな女の人が、確実に楽しんでるんだからさあ。

世界一周!六本木昼餉(24) ドイツ

六本木で、ランチだけで世界一周は可能か?


 さらに時は下り、お盆休みも終わりましたね。私はもちろんお休みなどございませんでした。通常どおり出社し、通常どおりランチで世界をめぐる。が、六本木界隈。勤め人向けの食事処はお盆期間に閉まってしまうのだ!まともに開いているのは「観光地」六本木ヒルズだけ。残り少なくなってきた諸国めぐり、今回はヒルズ内に4月オープンしたばかりのドイツ料理店「フランツィスカーナー」に行ったのだ。選択の余地なし。

 この店は六本木ヒルズ・ハリウッドプラザ棟の地上1階外側にあって、この場所は私が六本木で働き始めての5年間で2回お店が変わっている。来たばっかりのときは、高いくせに異様に盛りの少ない京風うどんのお店。それから2、3年して「モトヤマ・ミルク・バー」という、これまた目の飛び出るほど高いソフトクリームのお店に変わった。それも撤退し、跡地に4月、ドイツ料理店が開店すると知って私は狂喜したもんね。六本木にありそうでないのがドイツ料理店だった。ランチ営業は一軒だけ、「ツム・アインホルン」というお店が六本木一丁目駅そばのビルの中にあるんだけど、六本木一丁目は激しく遠いんだよー。会社から歩いて20分はゆうにかかる。昼休みに行くのは無理だべ。と、諦めていたところだったから。しかもこの「フランツィスカーナー」、かなりの名店らしい。日比谷公園で5月に開催するドイツビールのお祭り「オクトーバーフェスト」に出店し、「SPATEN」という美味しいミュンヘンビールを供していたのだ。否が応なく増す期待。
 ところがこの店…えらく閑古鳥。お昼時にもまったくお客さんが入っていない。ウエイターさんが外で客引きをする始末。なんでかねえ。高いから?確かに名物ソーセージ付きのランチが¥1,180もする。でもヒルズにしては標準価格なんだよねえ。それとも場所が悪い?たしかにここ、表通りの国道246からは引っ込んでいてわかりにくいし、メトロプラザハリウッドや森タワーなどヒルズ内部からも行きにく〜い構造になっている。私とて毎日ヒルズの中を通って通勤しているくせに、店の前を通りかかったのはたまたま、腰痛で整形外科に行った帰り、森タワーの調剤薬局に薬もらいに行かなきゃー、と遠回りした時っきりだったのだ。そうこうするうちにお盆到来。いよいよこの店でランチを食うときがやってきた。ちゃんと¥1,180も貯めてきたぞ。
 と…混んでいた。ちゃんとお盆のヒルズの体は成していた。入るといきなり、ウエイトレスのお姉ちゃんの値踏みするような視線。そうなんだよ、ヒルズの店はみんなこう!入ってきた客を値踏みするみたいに見て、それからツンケン冷たく席に案内するの。「きたならしい貧乏くさいおばちゃんが入ってきた」と言わんばかりに。だからヒルズの飯屋は嫌いなんじゃ!値段が高いばかりでこれだもん。若い女の子・男の子の接客員が特にそうだ。おまえらがどれだけ賃料の高い、お偉いヒルズで働いてるか知らないけどな!どうせテレ朝やJ-WAVE帰りの芸能人が来たらヘイコラするんでしょ。
 と、席についてもなかなかオーダー取りに来ない。水も持ってこないよ。店内にはウエイトレスが3人いる。全員、所在なさげにウロウロするかボーッと突っ立っているばかり。なんだなんだ?店は混んでいるとはいえ、ところどころにまだ空席があるのだ。やっと「ソーセージランチ」と注文を通してもらい、待ち始めるがこれまたいつまでたっても何も出てこない。やっと出て来たのがまず…セットの飲み物・アイスコーヒー!?あたし「飲み物は先にして」って頼んだっけ?食事より先に来られても、氷で薄くなるばかりだから困るんだけどなあ。
 また待たされて次に来たのが…いきなりメインの皿かよ!大きなソーセージと付け合せのザワークラウト、おイモがどーん。え?これを、アイスコーヒーだけをおかずにクエ!( ・∀・)つ● ってか!?そんなあ。いくらなんでも他に、パンかなんかあるんじゃないの?と、待ちながら、しかしランチ時間にも限りがあるのでとりあえずメインをモソモソ食べ始める。そりゃ、まずくはない。焼いたソーセージも、炒めたイモもキャベツも、素朴で質実な家庭の味だ。が、それにしても他に何にも出てこない。しびれを切らして、ウロつくウエイトレスをひとり呼びつけて聞いてみる。すると、「失礼しました。すぐにパンと前菜をお持ちします。」
 は?
 前菜!?


 ほどなくして黒っぽい丸パンと、前菜の盛り合わせが出てきた。涼しげなトウモロコシのゼリー寄せと、サワークリームののったクネッケ、そしてスイカのシャーベット。まぁー見た目にもさわやか、暑いときでも食欲をそそりますね。ってメイン食った後じゃー!!何の冗談のつもりだ?こうしてランチコースの世にも不思議な逆回転という、他では得られない愉快な体験を¥1,180払って致しましたとさ。
 しかもパンにバターさえついてないや。ひとのダイエットに気を使ってくれてありがとう。スープもないのか。この相場なら六本木界隈どこだってつくよ。それ以前に接客のイロハのイがなってないじゃないか。中華だってあーた、先にご飯やソバ出して最後に冷菜出したら厨師は頃されるよ。いや相手が皇帝なら家来と飯屋の従業員全員、それどころか飯屋のある町の住民全員粛清だってば。お盆でさあ…混んでてさあ…しかも相手がオノボリ観光客ばっかりだと思ってさあ…客なめんな。星2つ半じゃ!
 たぶん開店以来突然の混雑で厨房がパンクしてたんだろうな。接客員はいっこうに料理がまわってこないのでウロウロぼけーっとするしかない、みたいな。お盆が混むなんてわかりきってることなんだからさあ…あらかじめ対応考えときなよー。同じ日の(この日8月13日)東京ビッグサイトそばのマ○ドナルドを見習えっての。コミケ参加者17万人の胃袋を満たすため、全国のチェーン店からよりすぐりの精鋭を集めて接客体制を組んだという噂だ。いくら高級な料理を出したって、気取ってるばっかりで接客もおルスになるなんてねー。ちょっとねー。というわけで六本木でドイツ料理店に行くなら、(外観しか見てないけど)こぢんまりして歴史もある「ツム・アインホルン」の方がヨサゲだよ!

本日の評価 ☆☆半

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アワー・ディケイド

 今週NHK-BSが「銀河鉄道999」を一週間ぶっ通しで放送したけど良かったわぁ。忙しいのについ見入ってしまいました。子供のころ本放送も見ていたがイマイチ楽しめなかった。この年になって、いろいろなこと(大半がヲタ知識)を知って、改めて見て素晴らしさに気づいた。でまたその素晴らしい作品に花を添える主題歌がさあ。テレビ版オープニング・エンディングの佐々木功の歌もイイんだけど、映画版のゴダイゴがまた、ねえ。最高じゃないか。
 誰にでも出身大学に「尊敬すべき大先輩」がいると思うけど、私の尊敬すべき先輩はロシア科の故・米原万里さんと英米科のタケカワユキヒデ、この二人をおいていない。いまやでっぷりテラテラ、貫禄たっぷりのオジサマになったタケカワ氏だが、やっぱりBSの「999」特番にバリバリ登場して映画主題歌も披露していた。
 ゴダイゴって凄いんだよ。演奏技術はドッキリするぐらい高いし曲もいちいち素晴らしい。(ちょっと「この人たちTOTOよっぽど気に入ってたんだなあ」と思うことはあるけど。)どんな場所でも生演奏で完璧なライヴをやっちゃう。Youtubeに30年ぐらい前の中国・天津公演のライヴ映像がいっぱいあがってるけど衝撃的だ。私が「なんなのこの国!なんにもないじゃない!まるで牢獄だわ!」とブチギレながら旅行した頃からさらにさかのぼること10年。きっとあまりにあんまりな暗黒帝国であったに違いない中国で、今のどんなバンドよりも上手く、エキサイティングな演奏をしてしまうゴダイゴ。しかもタケカワユキヒデはニッコニコの笑顔だ!
 んでもってさすが英米科の人らしく英語詞の曲がたくさんある。「ビューティフル・ネーム」「ガンダーラ」など日英両バージョンある曲も多い。が、しかし!この人たち英語詞は外注だったんだね。奈良橋陽子さんという方がたくさん書いておられる。このへんが逆に、さすが外大一かしこい英米の人!って気もする。いまの馬鹿マスコミ&馬鹿宣伝マンなら「外大英米科に通う高い英語力を生かして、自分で作詞!」などと惹き文句にしたくて、むりやり本人に作らせたことにするのだろうが。
 じゃあプロの英語遣いで作詞家の奈良橋さんがどんな詞をつけていたかというと、私はごく近年になって「モンキー・マジック」の英詞の内容を知って、…ずっこけた。だって西遊記のあらすじそのまんまを唄ってるだけなんだもん!「お山の中で石から生まれたよ!ふしぎな暴れ猿が、親切なお坊さんと出会って西方を目指す旅に出たよ!」…それだけだ。よく考えれば「銀河鉄道999」の英詞サビだってそうだ。「銀河鉄道999は、君を永遠の空の旅へと連れて行く。」それだけだ。アニメの内容を一言であらわしているだけじゃないかっ。
 でもそこがキモだったのではないか?と考察する。
 彼らは同時代の人気バンドの中でも「こども向け」の仕事が際立って多かった。国際児童年テーマソングで「みんなのうた」でも流れた「ビューティフル・ネーム」。アニメ映画主題歌「銀河鉄道999」。さらに日曜夜8時放送のファミリードラマ「西遊記」の主題歌も2期にわたって手がけた。こどもはもちろん英語詞の意味がわからない。なんかかっこいいことを唄ってるんだろうなあ。なんて唄ってるのかなあ?まわりのかしこそうな大人に訊く。学校の先生か、インテリなパパさんか、大学生のイトコのお兄ちゃんか。そのときこどもに意味を説明できるような、納得させられるような内容を、彼らはあえて唄っていたのだ!
 これは大事なことだ。たとえば時代が下って香取慎吾西遊記の主題歌、MONKEY MAJIKの「AROUND THE WORLD」も前半が英語詞なのだが、これ、たとえ訳すことが出来ても、こどもに意味を納得させるのはとっても難しい詞だ。概念が抽象的すぎるのよ。
 そういうことを考えるだにゴダイゴは、ことばの違う人々にもわかる歌を唄おう、大人とこどもの理解の壁をなるべく作らないようにしようと、深く考えながら音楽活動をしていた立派なバンドだわ。やぁーやっぱり真に尊敬すべき外大OBだってば。たとえ8年かかって卒業したとしてもさ。
 私もそうなりたいねえ。ことばの壁を越えて面白い漫画を面白がってもらおう。ヲタと非ヲタの壁、ジャンル違いのヲタどうしの壁をなるべく感じさせないように活動しよう、と思うよ。それでいつの日か見知らぬ大学の後輩に「尊敬すべきヲタOG」と噂されれば最高だねえ。
 そんなゴダイゴだが、「ガンダーラ」がヒットした絶頂期に「アワー・ディケイド」というアルバムをつくっている。ほぼ全編英語詞でとっても地味な内容、売上げも地味だったらしい。タイトル「僕らの10年」のとおり、過ぎし'70年代を振り返りましょうというコンセプトアルバムだが、唄っている内容が…ガイアナの『人民寺院』事件。アミン大統領の血の粛清。ドル・ショック、ニクソン・ショック。えらく社会派なのである。
 あたしゃこの収録曲「パープル・ポイズン」をきっかけに、初めて『人民寺院』のことを詳しく知ったもんね。911が起こるまでアメリカ史上最悪の、一度に900人以上が犠牲となったカルト教団集団自殺事件。事件の経緯を追うと日本の某狂信集団の惨事へ至る道のりとあまりに似すぎていて、人間って何で過去から学習しない生き物なんだろう?って愕然としたもん。
 それを、お茶の間のテレビでニッコニコの笑顔ふりまきつつ、こども向けのポップ・ソングを唄うゴダイゴが唄っていたのである。
 「世界に一つだけの花」も「夜空ノムコウ」も音楽の教科書にのる時代。それでもなんかうすっぺらい気がしていたのは、ゴダイゴのように「片面では時代を撃ちたい」という気概がないから、かもしれんね。
 いま「アワー・ディケイド」をつくることの出来るバンドが日本にいるだろうか?残念ながら、いない。唄う内容はこんなにたくさんあるのに。2000年からの10年。まあ「911」を唄った人は何人かいたけれど、その後も湾岸戦争SARS禍に新型インフルエンザ、そしてリーマン・ショック。日本経済も日本人の生活もめちゃくちゃになり、労働者が生活保護世帯を「ぜいたくだ」と羨み妬むほどに歪んでしまった世の中。それを、なぜ歌にして発表する人がいないのだろう?
 まあしょうがないわ。期待しないわ。「この人たちなら時代を撃ってくれる」と応援していたバンドが「あきらめないで〜」「君ならできる〜」などと突然うすっぺらいガンバレソングを唄い始めて心底ガッカリさせられたり、そんなのばっかりだもん。
 トップに登りつめた人こそそういう歌を唄うべきだと思うのに、なんだかなあ、唄わせてもらえないのかなあ。しけた世の中。あーつまらん。宇多田ちゃんもそういうのに嫌気がさしちゃったのかなぁ?かしこいお嬢ちゃんだからこそ。
 といいつつゴダイゴの「アワー・ディケイド」、ネットで試聴だけして買ってないんだけどw 曲がねー。シングルのヒット曲群に比べればまあ、イマイチなクオリティなので。ま、そのうち買うよー。それとゴダイゴといえば、小さい頃1年間だけ世田谷区に住んでたことがあって、それが彼らの絶頂期で、うちに「ゴダイゴのファンクラブですか?」という間違い電話がいっぱいかかってきたのよ。なんか1番違いとかだったのかねー。どんな電話番号だったんだろ?当時の「ゴダイゴ・ファンクラブ」の電話番号がわかる方、いらっしゃいませんか?
 


 

 
 

世界一周!六本木昼餉(23) インドネシア

六本木で、ランチだけで世界一周は可能か?


 あーら放置が長くてごめんなさーい。香港出張に行っていました。帰ってきてからも仕入商品の山に超パニクっててねえ。やっと人間界に戻ってきたので更新ができます。
 いえ諸国漫遊には行っていたのですよ。先週の金曜日はインドネシアへ。六本木ヒルズヒルサイド棟の中にあるカフェスタイルの専門料理店「バリ・カフェ プトゥリ」。なぜインドネシアかって?理由はない!ヒルズが会社からいちばん近いからだ。暑いし疲れ切ってるしそれ以上遠くへ行く気力がない!それだけ。そろそろ佳境に入ってまいりました世界一周。インドネシアがここまで後回しになったのは…この店あんまりおいしくないんだもん(苦笑
 すでに何度かランチに訪れている。ANAグルメマイルがついたから。けど半年ぐらい前に何の告知もなしに付与廃止になってよー。だったらこんなパッとしない味のお店もう来ないよー、と。や、ランチでは定番バリ料理がひととおり食べられるのよ。ナシゴレン、サテ(串焼きのお肉)、ミー(麺料理)。私自身もバリは2度行っているぐらい、キライじゃない。でも…どれもなんかパッとしない味なんだよー。サテなんかはボリュームたっぷりの盛り合わせセットで出てくるんだけど、量ばかり多くて「ぐぇっぷ」って感じ。だけどここ以外に、界隈にインドネシア料理のお店があんまりなくてさあ。遠出もめんどくさいし。というわけでプトゥリ再訪だー。
 と、行ってみた徒歩3分の六本木ヒルズは…親子連れだらけ。しまったー今は夏休み真っ最中だった。しかし今年は例年にまして餓鬼が多い!森美術館で「恐竜展」開催中なんだそうだ。恐竜展…にしてもこの異常なちびっこ濃度は何なんだ。 よいこの しょくん!キミたち そんなに きょうりゅうが すきなのかい? もっと ほかに すきなものが あるだろう? ポケモンとか。ムシキングとか。爆丸とかベイブレードとか。BB三国志ガンダムとか。(←香港動漫節で得てきたにわか知識) そっちに つれていってもらえば いいじゃないか! キミたち ママに いいくるめられて ママの しゅみに つきあわされるまま ろっぽんぎに つれて こられて いないかい? そうじゃなきゃこの騒々しさ、餓鬼餓鬼しさはないぜ。まったく。でレストラン街も大混雑。ハマったか…と思ったがSongちゃんは慌てない。ヒルサイド棟に下りてみると、かつてタイ料理店「オリエンタルプリンセス」だった場所が韓国料理店に衣替えしていた。そこは子供連れの母親連中でものすごく混んでいた。が、すぐ隣の「プトゥリ」はいつもどおりの人の入りだったのである。要するに母親連中の知識の範囲に及ぶ店しか混まないのだ。韓国、おしゃれカフェ、キッズ施設、スイーツ、激安、有名チェーンレストラン。その裏を掻けば、どんなに混雑する夏休みの商業施設でも昼飯にあぶれることはないぞ!これ豆な。
 というわけでスルリと入れたプトゥリ。ランチセットは各種¥1,050均一。今まで食べたことのないメニューを選べば、キラリと光るうまいものに出会えるかもしれないじゃん?「小エビのココナッツミルク煮込み」を選ぶ。要するにタイのレッドカレー的なアレだ。赤いおつゆにココナッツミルクまじりの。
 まずはカップに入ったスープが出てくる。ここからしてなんか…奇天烈な代物でさあ。カレー風味なんだ。しかもクルトン状のものが浮いてるけどこれ、ジャガイモ味だなあと思ったら、要するにポテトチップスじゃんかよー。これがバリの味なのー?そしてメインのレッドカレー。…まずくはない。でもやっぱり、いまいちパッとしない味だなあ。具のエビに味がしみてないよ。まあ煮すぎると硬くなるからだろうけど、なんかもうちょっと、具の味を物足りなさから救う方法があるんじゃないのー?デザートに、うすーいココナッツミルクに浸かったナタデココとダイス状缶詰フルーツが出てくるけどこれもなんだかなあ。唯一良いかなと思えるところはここ、「コピ」=バリ式の粉っぽいコーヒーが飲めるところだけど、この暑さじゃホットのコピもゴカンベンだし。
 ここは眺望は素晴らしい。外に毛利庭園が広がり、その向こうには真正面に東京タワーが立つ。見事な借景だ。内装も控えめにバリ雑貨を取り入れたインテリアセンスが悪くない感じ。だが、しかし、やっぱり、どうも…いまいちパッとせん味だわ。ヒルズでどうしても昼飯にあぶれたときには、どうぞ。

本日の評価 ☆☆☆


世界一周!六本木昼餉(22) スペイン

六本木で、ランチだけで世界一周は可能か?


 それじゃあスペインのメインランドの人々は何を食っているんだよ、ということで。界隈に何軒もあって「いつでも行ける」と後回しになっておりましたスペイン料理ヒルズにもミッドタウンにも一軒ずつあるよ。
 で、ヒルズの「スペインバルTAPEO」に行こうと思って店に来てみたら、あらまーパエリアセット¥1,450もするの。高い。しかも注文受けてから炊くので20分待たされるとよ。こりゃ昼休み中に帰れなくなりそう。急遽、目と鼻の先にある他店へ。ハリウッドプラザを出て、アイス屋「コールドストーンクリーマリー」など立ち並ぶ裏通りを芋洗坂方向へほんの少し。「amor de GAUDI」という、ちっちゃーいお店がある。夜の飲み会で一回来たことがあるのよ。飲み屋としてもなかなか悪くない店だが、お昼はどんなことになっているのだろう?行ってみよう!
 間口は狭いが中は意外と広い。木目を生かした暗めの店内。壁にはスペインに関するものが所狭しと貼ってある。フラメンコ公演のポスター、ペネロペ・クルス嬢主演映画のポスターやスチール写真、地図…このあいだ優勝したという世界けまり大会の切り抜き記事、タオル、ユニフォームも飾られている。真っ赤な試合着の背中に「DAVID VILLA」と黄色い縫い取りが入っている。なるほどこのデービッド・ヴィラさんという人が、けまりで精進したのかい。かえすがえすも私は一刻とて見ていないので存じ上げぬが、しかし世界一になるとは大したものだね。無敵艦隊以来の歴史的快挙なんじゃないの?スペインが世界に冠たる国になるなど。
 ここのパエリアランチは1日15食限定で、正午12時に炊き上がる由。前菜&サラダ、飲み物、デザートが付いて¥1,000。つまり12時に15皿分をまとめて炊いちゃうわけだ。前菜は芋入りのスパニッシュオムレツが一切れ、先週と同じようにパンにオカズののったピンチョス(ここはネギ・タマネギで和えた酢漬けの白身魚)。そして、さあさあ、黄色いパエリアがお皿に盛られて出てきましたよ。
 海の匂いがぷうんと漂ってくる。伊豆でもなく房総でもない、異国の海の匂いだ。いい香りだなあ!ごはんには海産物のダシがたっぷりしみていた。噛むとプツプツと芯が残る。たしかこれが本場式なんだよなあ?20年近く前に現地に行ったとき、コスタ・デル・ソルのトレモリーノスという町で食べたパエリアが、トロトロの雑炊状態にもかかわらず完全に芯が残ってたもん!良い子の諸君パエリアはよく噛んで食べよう、あとでポンポン痛くなるヨ。でもところどころにオコゲも入っていて、香ばしくてウマイヨ!
 具は海老、ムール貝、アサリが1個ずつ。しかし海老はダシが出切ってスカスカのお味。「わしゃすべて出し切ったわい、もう思い残すことはないわい」とばかりにコローンと横たわっていた。海老を先に食べて、ごはんを後にしたほうがいいな。それぐらい、すべてのうまみとダシがごはんの中に凝縮されていたのだった。少なくとも某サイ〇リヤの、ただ黄色いだけで油っこいだけの「パエリア」とはぜんぜん違う。
 デザートは出来合いの小さなケーキ一つだったけど、こりゃ千円で大満足だねえ。ところでお店のモニター画面ではスペイン映画が流れていて、でもタイトルなんてぜんぜんわかんないや、なんせ「ミツバチのささやき」ぐらいからスペイン映画なんてトンとご無沙汰だしー、と思っていたら、店内に画面とおんなじ顔の男女の写るポスターがあって「それでも恋するバルセロナ」だとわかったのだった。たしかにバルセロナだった。グエル公園とか写ってたし。しかし直球なタイトルだこと。


本日の評価 ☆☆☆☆


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世界一周!六本木昼餉(21) バスク自治州

六本木で、ランチだけで世界一周は可能か?


 いきなりだけどスペイン、万国たまけり大会優勝おめでとう!すごい盛り上がりだったそうですね。ぜんぜん見てないから知らないけど。そんなスペインの北部に、バスク人という異なる民族の住む自治州があるという。
 こないだ亡くなった井上ひさしの長編小説「吉里吉里人」にもちょろっと出てくる。あれは東北の一寒村・吉里吉里が突如日本国からの独立を宣言し「吉里吉里国」を建国するというお話で、同様に支配国家からの自治独立を目指す世界各地域の人々と連帯し、ついでそいつらの身体が悪いとこを吉里吉里病院で治療してやっちゃおう、みたいなくだりがある。そこにカナダ・ケベック州の人たちとかと一緒に出て来たような気がする。バスク人
 とはいえ武力で独立を勝ち取ろうとか他国の承認を得ようとか、現実はそこまでじゃないみたいで、普通に「自治州」として平穏にやってるみたい。あ、平穏じゃないの?なんか独立を目指す過激派組織があって空港とか公共機関とか狙ったりすんの?ETA?わー危ないねぇー。でもあれじゃないの?そういうのは中核派とか各○派とか、それっぽいヤツじゃないの?よくわかんない。
 そんなバスクの専門料理店が西麻布にある。シブいねー。なんかよっぽど政治的で過激な店なのかと思ったらさにあらず、バスクは知る人ぞ知る美食の郷で、世界的なお料理トレンドの中で注目されてるんだそうだ。先日行ったポルトガルの店「ヴィラ・マダレナ」にショップカードが置かれていた、このお店。「TXOKO」と書いてチョコと読む。あまいお菓子のチョコじゃなくて、地元で伝統的につづく、男たちが寄りあって一緒に飯を食う食堂施設のことなんだって。ここを「国」扱いして世界漫遊に組み入れるのは果たして是か非か、上記の理由からヤバいんじゃネーノという気もするが、まあハワイも香港も台湾もやってるからいいじゃん。というわけで西麻布TXOKOに、行ってみよう!
 六本木と西麻布交差点のあいだ、246からメンテルス六本木(ほぼ廃墟)ビルの角を入って2ブロックめ辺りにある、こげ茶色の看板のお店。この辺は他にもタイ料理、フレンチ、イタリアンなどヨサゲなお店がたくさんある。このお店も小ぢんまりしてるけどセンスいい。ワイン樽のにおいがプンと漂い、室内は落ち着いた木目調。スペイン国旗とぜんぜん違う、赤白緑のバスクの旗が壁中央に飾られている。
 日替わりランチがあってサラダ、前菜、ライス、飲み物、デザートつき¥1,000。この日は鶏肉のトマト煮込みとローストポークの二種類から選べたので、ローストポークで。マッシュポテト&マスタード添え。ここの豚肉は「バスク豚」という、なにやら特別なブタさんのお肉なのだそうだ。
 サラダはベーコンのフレークと酢漬けのリンゴ細切りがかかっていて、素朴ながらひと味違う。つぎに前菜「ピンチョス」。パンにいろいろ乗っけた「カナッペ」みたいなのをつまむ、中華における「小食」的な位置づけの食い物で、地元の名物なのだそうだ。出てきたピンチョスはパンの上にクリームチーズとはちみつがのっている。うまいな、これ!パンもチーズもはちみつもいちいちうまいよ!と、よろこんで食っていたところへ…ドンと置かれた白飯。…え!?ホカホカごはん?おちゃわん入りの???
 要するにメイン料理の付け合わせのライスだ。が、洋食器とはいえ小ぶりで深めの器(しかも妙にセンスがいい)、これどうみても「おちゃわん」なんですけど…。そしてこのごはん、日本の、フツーにうまいメシなんですけど…。こんなうまいごはんならサンマの塩焼かイカナゴのクギ煮かなんかで食いたいのであって、クリームチーズパンをおかずにはあんまりしたくない。
 と思ってるうちにメイン登場。焼いた豚肉だ。デカいっ!分厚いっ!!こりゃすごい。よくお中元のCMで、ハムを不必要なまでに厚くスライスして食ってるやつあるでしょ。あれがリアルで目の前に現われた!すごいぞ。さっそくナイフを入れ、デカい角切りを口に入れた。


(+д+)ショッパー


 塩気きつすぎ!お肉の中心の部分はちょうどいいんだけど、外側のパリパリした皮の部分が。おかげで会社に戻ってからお水ガブガブ飲む羽目になった。うちの梅干よりしょっぱい。
 お肉は素晴らしく美味しかったんだよー。これだけデカイのに筋っぽくもないしパサパサもしない。どこを切ってもモッチリ繊細。しかも脂身はとろけるような旨味があり、なのにコテッとした嫌な後味がない。だから…だからこそ、この馬鹿味の塩味がもったいないんだよー。
 デザートははちみつ味の砕きピーナツをふりかけたヨーグルトだった。まったく甘くなかった。とまあ、全体に素朴な素材の味をすごく大事にしている、いいお店だと思うんだけど、かえすがえすもお肉のしょっぱいのがねー。減点。まあ他のメニューではこういうヒサンな味つけはない…と信じたいし、お店の雰囲気も食器のセンスもとてもよいので、おすすめはしとく。


本日の評価 ☆☆☆☆


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世界一周!六本木昼餉(20) 台湾

六本木で、ランチだけで世界一周は可能か?

 異国料理の中でもわりとポピュラーな存在と思われる台湾料理。香港もやったことだし、台湾もやっていいんじゃない?と思ったら…意外にもランチ営業の台湾料理店がないのだ、六本木には。乃木坂に近いところに「石頭楼」という高級店があるらしいが夜営業のみ。むかしヒルズの中に「鬚張魯肉飯」があったけど閉まってずいぶん経つし。昼に台湾料理行くなら隣町の麻布十番まで行かなきゃならないらしいが、遠いやね。ただ薬膳火鍋レストランで「天香回味」というお店があって、ここがランチタイムに銀座店から台湾点心厨師を呼んできて「飲茶セット」を供するという。台湾風飲茶か…飲茶は広東の食習慣なんだけどな…まあ台湾ってことで、いいか。行ってみよう。
 外苑東通りを交差点から南へ。ドンキホーテの手前の角で左に曲がると、灰色のビルの壁上方に「天香回味 入口はこちら→」という看板がみえる。かなり小さなビル。狭い入口からエレベーターで4階に上がると、中は意外にも明るくモダンで綺麗。OLさんの集団がキャッキャいいながら食っている。しかしOLって呼び方もほぼ死語だな。もともと火鍋がメインのお店なのでテーブルにはIHクッキングヒーターが備わっている。
 点心は月の前半はチマキセット、後半は小籠包セットを出すという。で、チマキセットには蓮の葉包みチマキ、五目野菜蒸し餃子、台湾風棒餃子、台湾風春巻、エビ蒸し団子、台湾風大根もち、台湾風サツマイモ粥、漬物、小菜、デザートがセットされていて¥997。デザートは愛玉子ふうだったが若干リンゴジュース風味。小菜はほうれん草のおひたしだった。セイロの蒸し物ということもあって、だいぶ待たされて出てきた。
 急いで食わねば昼休みが終わってしまう。まずはサツマイモ粥から口をつける。米粒残るサラリとした粥には、…味がない。サツマイモ自体のかそけき甘さ、味らしい味といえばそれだけ。香港漫画店の店主は心中つぶやいた「なんじゃこりゃ?」。香港のコッテリ濃厚ダシ煮込みドロドロポタージュ状粥を食い慣れた舌にはいかにも間抜けなものに感じる。これが台湾式なのかい。米!イモ!水!をただ煮ただけのものやないかい。まあ、こういうものもあるってのは、理解はできるけど…それにしてもチマキの濃い甘辛しょうゆ味とバランスが取れてねえぞ。しかも漬物は酢漬けでこれまた味がバラバラだ。
 小皿で出てきた醤油に五香がきいていて、これをつけると何でも本場の味っぽくなるのだった。野菜蒸し餃子も春巻もエビ団子も。チマキだけはちょっと日本っぽい味付けだった。デカい豚の角切り肉が入っていた。大根もちはさすがにうまかった。フワフワで、焼き油もまったく臭くなく、干しエビの風味が豊かに香っていた。しかし…。この点心なあ。上品に上手につくってあるというのは、わかる。高級厨師が腕によりをかけてつくっているのが、よくわかる。でも…なんかちょっと足らんのだわ。パンチがきかない?上品すぎる?うーん…なんだろう。同じ点心でも海員会館ウラ香港料理店「尖沙咀」のソレは、つまんだとたん皮がピリリリーンと破ける残念な点心だったけど、でも「サイコーにうまい焼賣をつくったぜぇぇぇーーー!」「本場の蝦餃を食わしてやるぜぇーーー!」的なパッションは感じたんだわ。そういう「ミスター味っ子」ばりの暑苦しい情熱に欠けるっていうのかなあ。これが香港点心と台湾式点心の違いなのかね?いつも鉄火場のウルサくて熱い香港と、マターリおっとりの台湾と。
 それにしてもチマキをおかずにサツマイモ粥を食うってのはどうよ。前に読んだ本で、塩ゴハンをおかずに飯を食う男というのが出てきたけどまさにそれじゃん。それと、なんでお茶出してくれないんだよー。「飲茶セット」じゃん。プラス315円でホットコーヒーかアイス烏龍茶が付きます、って書いてあったけど普通のあったかいお茶は?なんでないんだよ??それとお店にゃ関係ないけどよ、ここ薬膳メニューもたくさんあるからかもしれないけどさ。隣のOL集団が食ってる間じゅうずうっと「○○の食材は内臓を温める効果があって」とかなんとか、どっかのダイエット本そのまんま受売りのうすっぺらーい能書き垂れ続けててさ。食い物なんてうまいかまずいか、腹にたまるかたまらないかしかないんじゃ!そんなに内臓を温めたかったら九陽真功でも修めてみればいいじゃん。軽ーく摂氏900度ぐらいに温まるよ?


本日の評価 ☆☆☆半

天香回味 六本木店

食べログ 天香回味 六本木店